
予約前の取りこぼし22.7% 自院サイトに何を書き足すか
初めて行くクリニックを比較した300名の調査で、予約前に情報が見つからず別の医院を選んだ人は22.7%でした。足りなかった情報の1位は費用や治療内容ではなく「自分が受診対象に当てはまるか」29.8%。広告できる範囲は2018年に広がっており、書けないのではなく書かれていない情報です。
2026年8月19日、クリニック向けのYouTube運用代行を手がける事業者が、初めて行くクリニックを自分で探して比較した300名の調査結果を公表しました。予約前に必要な情報が見つからず、そのまま別のクリニックを選んだ人は22.7%。院長の側から見れば、ここが取りこぼしです。対象は全国の20〜69歳の一般消費者300名で、受診の結果を追跡した調査ではありません。
足りなかった情報の1位は、費用や治療内容ではなく「自分が受診対象に当てはまるか」(29.8%)でした。医療広告のルール上、この種の情報は以前から書ける範囲にあります。この記事では、公的統計で以前から分かっていたことと今回の調査で新たに見えたことを分け、自院サイトのどこを確認すればよいかまで整理します。
取りこぼしと言えるのは22.7%。「57.3%」は3つの行動の合算
リリースの見出しは「57.3%が『情報不足』で行動を変更」です。この57.3%は3つの別の行動を合算した数字で、院長から見た意味はそれぞれ違います。
| 必要な情報が見つからなかったときの行動 | 割合 |
|---|---|
| 予約・受診をやめて、別のクリニックを選んだ | 22.7% |
| 予約・受診を延期した | 10.3% |
| 問い合わせをしてから判断した | 24.3% |
| 上の3つの合計=リリースの「57.3%」 | 57.3% |
| 情報は不足していたが、そのまま予約・受診した | 11.0% |
| 必要な情報は見つかった | 19.7% |
| 覚えていない | 12.0% |
院長から見ると、この3つは意味が違います。取りこぼしと言えるのは、別の医院を選んだ22.7%です。最も多い24.3%の「問い合わせをしてから判断した」は離脱ではなく受付や電話への問い合わせが増えている状態で、書いておけば済んだ質問が院内の手間に変わっていると読めます。延期した10.3%がその後に受診したかは、受診結果を追跡していないためこの調査からは判断できません。ここは編集部の整理です。57.3%をそのまま取りこぼしと読むと、2.5倍に見積もることになります。
公的統計で以前から分かっていたこと ── 患者が見ているのは口コミと自院サイト
患者がどこから情報を得ているかは、厚生労働省の受療行動調査で以前から示されています。令和5年調査では、ふだん医療機関にかかる時に「情報を入手している」外来患者は80.7%。その入手先は「家族・友人・知人の口コミ」68.4%が最も高く、次いで「医療機関が発信するインターネットの情報」28.8%でした。
前提は2つ。対象は全国の一般病院を利用する患者で、診療所・クリニックは客体に含まれません。入手先の割合も、分母は外来患者全体ではなく「情報を入手している」と答えた者です。
それでも使える点は残ります。最も参照される口コミは医院が直接書けない領域なので、医院が自分で内容を決められて、なおかつ患者が実際に参照している経路は「医療機関が発信するインターネットの情報」=自院サイトだけになります。
書ける範囲は2018年に広がっていた。足りないのは「自分が受診対象か」
自院サイトに書ける範囲は、2018年6月施行の改正で大きく広がっています。医療広告等ガイドラインは、ウェブサイトも他の媒体と同様に広告可能事項を限定すると「詳細な診療内容など患者等が求める情報の円滑な提供が妨げられるおそれがある」として、一定の条件の下で広告可能事項の限定を解除する仕組みを置いたと説明しています。
その条件は①〜④で、③と④は自由診療について情報を提供する場合に限られます。保険診療の診療内容を詳しく書くなら、必要なのは①と②だけです。
| 広告可能事項の限定解除の要件 | 保険診療のみを書く場合 |
|---|---|
| ① 患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイト等であること(バナー広告や、費用を払って上位表示させた検索結果は①を満たさない) | 必要 |
| ② 問い合わせ先(電話番号、Eメールアドレス等)を記載することその他の方法により明示すること | 必要 |
| ③ 自由診療の通常必要とされる治療内容・標準的な費用・治療期間及び回数を提供すること | 不要 |
| ④ 自由診療の主なリスク・副作用等を提供すること | 不要 |
今回の調査で患者が「足りなかった」と答えた情報を見ます。分母は300名ではなく、情報不足を経験した205名です。
| 不足していた情報(情報不足を経験した205名・複数回答) | 割合 |
|---|---|
| 自分が受診対象に当てはまるか | 29.8% |
| 医師の人柄・診療方針 | 25.9% |
| 診療・治療・施術の具体的な内容 | 24.9% |
| 医師の専門性・経歴 | 23.4% |
| 予約方法・待ち時間 | 23.4% |
| 費用・保険適用・追加費用 | 22.0% |
1位の「自分が受診対象に当てはまるか」は、診療内容(24.9%)や費用(22.0%)より多い並びで、ここが今回の調査で新しく見えた部分です。診療科目・診療内容・料金は多くの自院サイトに載っている一方、「どんな症状の人が来てよいのか」「どこからが専門外なのか」という、患者が自分に当てはめて読める形の記載は置かれていないことがあります。
国が限定解除を設けた理由は、まさに「詳細な診療内容など患者等が求める情報」を届けるためでした。8年たって患者が最も足りないと答えたのが、その診療内容を自分に当てはめる手前の情報だったことになります。「書けないから書いていない」のではなく「書けるのに書いていない」状態です。2026年4月施行の改正で何が変わったかは医療広告ガイドライン2026年改正の記事で扱っています。
動画より先に公式サイト。作るなら改善例が設計図になる
調査は動画やSNSの利用も聞いていますが、先に手を入れるのは公式サイトだと編集部では考えています。利用しやすい形式の1位は「3〜5分程度の短い解説動画」34.0%でしたが、2位の「文章中心の公式ホームページ」27.3%との差は7ポイントで、複数回答のため排他的な関係ではありません。さらに今回のクリニック探しでYouTube・Instagram・TikTok・Xのいずれかを確認した人は300名のうち38名でした。リリースはこの38名に絞って影響を聞き上位3項目の合計を86.8%としていますが、これは38名を分母とする数字で、300名の話ではありません(リリース自身が同じ注記を付けています)。実施主体はクリニック向けYouTube運用代行を販売している事業者です。
そのうえで動画を作るなら、中身は自分で考えなくても済みます。予約前に見たい動画の上位は「症状や悩み別の受診目安」36.0%、「診療方針の説明」30.7%、「治療・施術の選び方」29.7%、「初診・診察・カウンセリングの流れ」28.7%。この並びは事例解説書(48)が改善例として示している記載と重なります(下図。改善例は自由診療が前提)。1位の「受診目安」に対応する改善例は同書に見当たらず、ここは自院で書く領域です。

院長が確認すること
自院サイトに、次の記載があるかを確認します。調査から言えることと、医療広告等ガイドラインが求めていることは分けて書いています。
- 「どんな症状・状態の人が受診対象か」が書かれているか不足情報の1位。対象にならないケースを書くことも判断材料になります。診療科目・診療内容の範囲内で説明できます。
- 初診で何をするか、どのくらい時間がかかるかが書かれているか事例解説書(48)の改善例も、この工程を示す形になっています。
- 医師の診療方針が本人の言葉で書かれているか「医師の人柄・診療方針」は不足情報の2位。経歴の羅列では埋まりません。
- 費用が保険診療と自由診療に分けて書かれているか事例解説書(48)は、費用を前面に押し出さずに記載する形を改善例としています。
- よく来る問い合わせが、そのままサイトに書かれていないか最多の24.3%は「問い合わせをしてから判断した」。同じ質問が続くなら、書けば院内の手間が減ります。
- 自由診療を動画やSNSで説明するなら、治療内容・費用とリスク・副作用が一体的かつ一覧性をもって示されているか今回の改訂で新設されたルールではありません。院長個人のアカウントでも、医院への特定性と誘引性があれば医療広告に相当します。
分母について、リリースから確認できないこと⌄
「予約前に見たいクリニック動画」「利用しやすい形式」「安心感や信頼感が高まった経験」の分母は、リリースに明記がありません。「YouTube/SNSから公式ホームページや予約ページへ移動した経験(重複を除いて44.7%)」も分母の記載がありません。設問文も公表されていないため、本記事はリリース記載の割合と分母をそのまま引いています。
まとめ
- 情報が見つからず別のクリニックを選んだのは22.7%。リリースの「57.3%」は3つの行動の合算で、そのまま取りこぼしと読むと2.5倍に見積もる。最多の24.3%は離脱ではなく問い合わせ
- 受療行動調査では外来患者が最も参照するのは口コミ68.4%で、医院が内容を決められて患者も参照する経路は「医療機関が発信するインターネットの情報」28.8%=自院サイト(対象は一般病院の患者で診療所は含まれない)
- 保険診療の診療内容は、自院サイトに問い合わせ先を書けば限定解除の要件を満たし、詳しく書ける。足りないと分かった「自分が受診対象か」29.8%は、書けないのではなく書かれていない情報
- 今回のクリニック探しで動画・SNSを確認したのは300名のうち38名(「上位3項目で86.8%」はこの38名が分母)。動画を作るなら、患者が見たいと答えた内容は事例解説書(48)の改善例と重なる
出典:株式会社ビーヘルシー「クリニック選び、57.3%が「情報不足」で行動を変更 予約前に見たい動画1位は「症状別の受診目安」」(2026年8月19日/PR TIMES)。調査名は「クリニック選びにおけるYouTube/SNS利用と予約前行動調査」。直近1年以内に自分または家族のために初めて行くクリニックを自分で探して比較した20〜69歳の男女300名(対象地域は全国)を対象に、2026年8月7日にインターネットで実施されたもの(調査機関 Freeasy)。実施主体はクリニック向けYouTube運用代行・コンサルティングを提供する事業者で、リリースにはサービスページ・お役立ち資料・無料相談への導線が置かれています。受診結果を追跡した調査ではありません。厚生労働省「令和5年(2023)受療行動調査(概数)の概況」(対象は全国の一般病院を利用する患者。診療所は客体に含まれない。入手先の割合は「情報を入手している」と答えた者を分母とする)、同「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」(令和8年3月30日最終改正)、同「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」(令和8年3月)(44)(48)(最終確認:2026年8月25日)。