外国人の増加と医療費の未払い 厚労省調査7年分とクリニックの決済手段
2026年8月25日、厚生労働省が「外国人患者の受入に係る実態調査」の令和8年度分の実施案内を公開。直近の令和6年度は受入実績がある2,890病院のうち470病院(16.3%)で未収金が発生。過去7年の推移と決済手段の現状をまとめました。
2026年8月25日、厚生労働省が毎年おこなっている「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」について、令和8年度分の実施案内が公開されました。この調査で毎年数えられているのが、外国人患者の医療費の未払いです。直近の結果(令和6年度)では、外国人患者の受入実績があった2,890病院のうち470病院、16.3%で未収金が発生していました。
未収金が発生した病院では、平均3.9件、49.8万円の未収がありました。また、未収金の71.4%は1件あたり5万円以下。つまり、外国人患者の未払いは、高額な医療費が一部、5万円以下なので範囲が広いのですが、大部分は5万円以下の未払いという構成です。
クリニックの調査については、京都府と沖縄県のみが対象となっているため、全国のクリニックで外国人患者の未払いがどの程度発生しているのかは、現在の公的統計からは分かりません。その点を踏まえてこの記事では、過去の推移と、未払いの一部防止につながる決済導入率のデータを合わせて紹介します。
2024年から過去7年分の未払いの推移
この調査は、全国の病院と、一部の府県の診療所に調査票を配り、外国人患者をどれだけ受け入れたか、未収金がいくら出たか、どんな受入体制を取っているかを尋ねるものです。
この調査でいう「未収」は、「請求日より1ヶ月を経ても、診療費の一部又は全部が支払われていないこと」と定義されています。窓口でその日に払えなかったものがすべて数えられるわけではなく、1か月の猶予を過ぎたものが対象です。集計されるのは各年度1か月分で、令和3年度から令和6年度は9月、平成30年度から令和2年度は10月が対象月でした。
図の線が2本に分かれているのは、途中で数え方が変わったからです。令和2年度の調査から、未収金の定義が「全額が支払われていない場合」から「一部または全部が支払われていない場合」へ広がりました。一部だけ入金があって残りが未払いというケースが、令和2年度以降は未収金に含まれています。
比較できる範囲で見ると、定義が変わったあとの5年(令和2〜6年度)は16%台から19%台の間を行き来しており、直近の令和6年度は前年の18.3%から下がっています。
2020年は、コロナ禍の水際対策で訪日外国人がほぼ途絶えていた時期の調査です。この年度は渡航者を除いた純粋な在留外国人の未払いデータといえます。
調査票の配布数・回収率と、様式が変わった可能性について
未収金を尋ねる調査票(病院B)の配布数は7年度とも8,188〜8,417で大きく変わっていませんが、回収率は令和2年度の49.5%から令和6年度の66.8%まで幅があります。任意のアンケートなので、回収率の変動が数字にどう影響しているかは評価できません。
また、令和3年度と令和4年度の調査票には、患者ごとに未収金の理由をチェックする欄がありました(分納中・分納交渉中/保険会社と交渉中/請求先が不明・連絡が取れない/生活に困窮しており支払い能力がない/支払いの意思がない/回収の働きかけをしていない/その他)。令和5年度と令和6年度の報告書の様式集ではこの欄が確認できず、集計質問に置き換わったとみられますが、変更の時期と理由を説明した記載は見つかりませんでした。
別データで見る「患者アンケートから分かった決済実態」
2026年8月18日に公表された「関東圏の医療機関における決済実態調査(2026年)」では、現金しか使えない医療機関の会計で手持ちの現金がない、足りない、またはギリギリだった経験がある人は28.0%(140名)でした。ただしこれは外国人患者の調査ではなく、過去半年以内に病院・クリニックを受診した関東圏在住20〜60代男女500名を対象にした、日本人を含む一般の患者への調査です(2026年7月1日〜8日・インターネット調査)。前回調査の39.4%からは11.4ポイント下がっています。
この140名がそのときどうしたかを見ると、ATMへ向かった人が67.1%、自宅へ現金を取りに帰った人が23.6%でした。未収金として計上されるかどうかにかかわらず、受付にはこの待ちが残ります。この調査の内容は「患者の現金不足は28.0%に減少、それでも会計の保留は残る」で詳しく扱っています。
カード決済の導入は病院64.5%、京都府と沖縄県の診療所は35.8%
医療機関側の支払い手段については、同じ厚生労働省の調査に「クレジットカード(デビットカードを含む)を利用した決済の導入状況」という設問があります。令和6年度の結果は、病院が導入している64.5%・検討している2.2%・導入していない33.3%(n=5,864、回収率71.3%)でした。
一方の診療所は、導入している35.8%・検討している2.4%・導入していない60.1%(n=1,532、回収率31.7%)です。この診療所の数字は京都府と沖縄県の診療所だけを対象にしたもので、全国のクリニックの導入率ではありません。回収率も病院の71.3%に対して31.7%と低く、回答した施設に偏りがある可能性もありますが、全国の病院とデータが存在する京都・沖縄のクリニックの2024年から過去5年分のカード決済の導入率を見ると、年々同じような推移で増えているのがわかります。
未払いの中身は1件5万円以下が71.4% 回収は分割払いが56.4%
未払いの金額の分布は公表されています。令和6年度は、未収金が発生した延べ1,825人のうち1,303人(71.4%)が1件あたり5万円以下でした。未収金があった病院の平均は3.9件・49.8万円です。高額な事例も報告されていますが件数は少なく、多くは少額の積み上がりです。
総額の側は、未収金が発生した病院の合計で令和5年9月の約2億4,465万円から、令和6年9月の約2億3,291万円へ動いています。未収金が発生した患者の割合(未収金発生患者数を延べ患者数で割ったもの)は1.5%から1.2%です。この2年の比較は令和6年度の概要版にだけ載っているもので、3年以上つないだ推移は公表されていません。
回収の方法としては、「分割払いの実施」が56.4%で最多でした。次が「その他」29.5%で、その内訳としてクレジット決済・現金支払い、預り金、外部業者への回収委託などが挙がっています。
不払いの外国人の情報は、2026年4月から1万円以上で入国審査に共有される
制度の側でも変更がありました。医療機関が報告した未払いの情報を国が入国審査で使う仕組みがあり、2026年4月1日から、報告の対象になる金額の基準が大きく下がりました。
厚生労働省が医療機関向けに出している報告マニュアル(v1.07)には、「令和8年3月31日に発生した未収金については未収金の累計残高が 20 万円以上、令和8年4月1日以降に発生した未収金については未収金の累計残高が1万円以上が登録対象となります」と書かれています。発生した日で基準が分かれる書き方です。
仕組みそのものは新しいものではなく、運用が始まったのは2021年5月10日です。医療機関が「訪日外国人受診者医療費未払情報報告システム」に登録し、厚生労働省から出入国在留管理庁および地方出入国在留管理局へ情報が提供されます。使われるのはその外国人が次に来日するときの入国審査で、マニュアルには「入国審査以外の目的で使用されることはありません」と明記されています。
ただし、この仕組みは現場にあまり知られていません。令和3年度の調査では、報告システムに医療機関登録をしている病院は0.7%にとどまり、「知らなかった」が58.5%でした(いずれも令和3年度時点の数字です)。基準が下がったことも、同じように届いていない可能性があります。
クリニックでの未払いの防止策まとめ
そのうえで院内で決められるのは、支払い手段そのものと、支払えなかったときの手順です。会計だけを切り出すのではなく院内全体の優先順位のなかで考えるなら、クリニック医療DXの全体設計もあわせて参照してください。
- ✓使える支払い方法を、会計の前に伝える受付での案内と院内表示で先に示す。会計のときに現金しか使えないと分かる形だと、ATMへの往復が発生する
- ✓現金が足りなかったときの院内ルールを1つに決めておく後日の再来、振込、分割のどれを案内するか。担当者によって案内が変わると、記録も分散する
- ✓未収が出たときに、発生日と累計残高を追える形で記録する2026年4月1日以降に発生した未収金は累計残高1万円以上が報告システムの登録対象になるため、金額の積み上がりが分かる記録が要る
- ✓報告システムの医療機関登録をしているか確認する令和3年度時点で登録済みの病院は0.7%、知らなかったが58.5%。登録の有無は院内の誰も把握していない場合がある
- ✓決済手段を検討するときは、手数料・入金サイクル・会計連携・受付の例外処理を並べて比べる導入の可否ではなく、この4つの条件でどこまで院内の手間が減るかを見る
よくある質問
病院の未収金の割合を、自院(クリニック)の目安として使えますか⌄
使えません。分母が「外国人患者の受入実績がある病院」であり、診療所は京都府と沖縄県だけが調査対象です。全国のクリニックを対象にした未払いの統計は公表されていません。クリニックの判断に使えるのは、患者側の決済行動の調査(現金不足28.0%、そのうちATMへ67.1%)と、支払い手段の導入状況です。
キャッシュレスを導入すれば未払いは減りますか⌄
公表されているデータからは、減るとも減らないとも言えません。厚生労働省の調査には未払いの理由を集計した公表データがなく、カード決済の導入と未収金の発生をかけ合わせた集計も公表されていないためです。判断材料になるのは、未払いの71.4%が1件5万円以下という金額の分布と、現金が足りなかった患者の67.1%がATMへ向かったという行動のほうです。
未払いが出たら、必ず入国審査へ報告されるのですか⌄
対象は訪日外国人受診者の未払情報で、報告システムに医療機関登録をした医療機関が登録する仕組みです。2026年4月1日以降に発生した未収金は累計残高1万円以上が登録対象になります(それ以前に発生したものは20万円以上)。使われるのは次の入国審査で、マニュアルには「入国審査以外の目的で使用されることはありません」と明記されています。報告された件数は公表されていません。
自治体の補填制度はありますか⌄
救急医療で生じた外国人患者の未払医療費の一部を医療機関に補助する制度は、複数の自治体にあります。東京都の外国人未払医療費補てん事業は1医療機関・1患者につき上限200万円で、入院14日以内・外来3日以内などの要件があります。埼玉県は平成6年度から県内市町村と共同で同種の補助金を運用しています。ただし交付件数や金額の実績を公表している資料は確認できませんでした。要件は自院の都道府県のページで確認してください。
まとめ
- 令和6年度は、外国人患者の受入実績がある2,890病院のうち470病院(16.3%)で未収金が発生。ただし令和2年度に未収金の定義が変わっており、平成30年度・令和元年度の数字とはつなげて読めない
- 全国のクリニックを対象にした未払いのデータはない(診療所は京都府と沖縄県のみが調査対象)。病院の割合を自院に当てはめることはできない
- 日本人を含む一般の患者への調査では、現金しか使えない会計で28.0%が手持ち不足を経験し、そのうち67.1%がATMへ向かっていた。院内には会計を保留して待つ仕事が残る
- カード決済の導入は病院64.5%、京都府と沖縄県の診療所は35.8%(未導入60.1%)。未払いの理由やクロス集計は公表されていないため、キャッシュレスで未払いが減るとは言えない
- 2026年4月1日から、未収金の累計残高1万円以上が入国審査への共有対象になった(それ以前は20万円以上)。報告された件数は公表されていない
- 厚生労働省「令和8年度「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」について」(調査の実施案内。確認日2026年9月10日)
- 厚生労働省「令和6年度医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査について」概要版/全体版。未収金の発生状況(2,890病院中470病院・16.3%)、1件5万円以下が71.4%、回収方法、クレジットカード決済の導入状況(病院n=5,864/診療所n=1,532)。確認日2026年9月10日
- 同 令和5年度(概要版/全体版)・令和4年度(概要版/全体版)・令和3年度(概要版/全体版)・令和2年度(概要版/全体版)。令和2年度概要版11ページの脚注に「※ 未収金の定義を変更したため前年比較は行っていない」。確認日2026年9月10日
- 厚生労働省「令和元年度医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査結果(速報版)について」(2,402病院中298病院・12.4%)/「令和元年度医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査について」(平成30年度分=2,174病院中386病院・17.8%)。確認日2026年9月10日
- 厚生労働省「訪日外国人受診者医療費未払情報の報告マニュアル(医療機関向け)」v1.07。登録対象となる金額の基準と、入国審査以外の目的で使用されないことの記載。確認日2026年9月10日
- 株式会社エム・ピー・ソリューション「関東圏の医療機関における決済実態調査(2026年)」(2026年8月18日/PR TIMES)。過去半年以内に病院・クリニックの受診経験がある関東圏在住20〜60代男女500名を対象に、2026年7月1日〜8日に実施したインターネット調査。同社はキャッシュレス決済サービスの提供事業者
- 東京都保健医療局「外国人未払医療費補てん事業」(確認日2026年9月10日)
- ※未収金の理由別の集計結果は、令和2〜6年度の概要版・全体版に掲載が確認できませんでした。クレジットカード決済の導入と未収金の発生をかけ合わせた集計も同様です。報告システムに登録された件数は、厚生労働省・出入国在留管理庁のいずれも公表していません(最終確認:2026年9月10日)
本記事は編集プロセスの一部で生成AIの技術を活用し、その上で医療DXガイド編集スタッフが確認・加筆・修正したうえで掲載しています。